『いいことの交換』 エッセイ - 暮らしの拾いもの Vol.13
11.14 2023
我が家は、冷凍庫の製氷機で作れる氷の量が少ないので、定期的に近所の小さなスーパーに買いに行くことにしている。
その日も氷を買い足さなきゃと思い、おなじみの冷凍食品の扉の前に行くと、小柄で可愛らしいおばあちゃんが立っていた。
高い位置の商品もあるので、「どれか取りましょうか?」と声をかけると、「これは冷凍食品ね。どれがおいしい?」と逆に質問が返ってきた。
私の目的は氷だけなのだが、おばあちゃんには冷凍食品を買う人に見えたのだろう。
普段食品はあまり買わないので少し悩んだが、「これなら使うぶんだけ解凍して、すぐに料理に使えるし、長く持ちますよ」と言って、ブロッコリーやほうれん草などの冷凍野菜をおすすめしてみた。
これなら私も使ったことがあるし、実際便利なことを知っている。
するとおばあちゃんは、「まあ、使うぶんだけ?」と驚いたあと「いいことを聞いたわ〜!」ととびきりの笑顔を見せてくれた。
そしてご希望のブロッコリーを棚からとって渡すと、「ブロッコリーを油揚げの味噌汁に入れると美味しいの」とこっそり教えてくれた。
ブロッコリーを味噌汁に?それは知らなかった。
実は最近、味噌汁の具のマンネリに悩んでいたのだ。
最後に私が氷を手に取ったとき、はじめておばあちゃんは、私が「氷を買いに来た人」であることに気づいたようだ。
ごめんなさいね、と申し訳なさそうなおばあちゃんに「私もいいことを聞きました」と伝え、同じ冷凍のブロッコリーを買うことにした。
冷凍食品コーナーで偶発的に生まれた、「いいこと」の交換。
その夜初めて作ったブロッコリーのお味噌汁は、たしかにおいしくて、今後作るたびに、あのおばあちゃんのことを思い出すだろう。
(おわり)
#暮らしの拾いものvol.12
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