『頼ること、甘えること。』 エッセイ - 暮らしの拾いもの Vol.23
09.20 2024
最近、仕事で“老い”について考える機会があった。
大切な人に変化が起きたとき、周りにいる私たちには何ができるのか。
専門家の方と編集部のメンバーで対話をしていくなかで、印象に残った話がある。
それは、相手が高齢で、もし介護が必要だったとしてもできること、やりたいことまで奪ってはいけないということ。
ただお世話されるばかりでは、本人の生きがいが失われてしまうのだと。
この話を聞いたとき、私は99歳の父方の祖母のことを思い出していた。
私とちょうど70歳離れた祖母は、おしゃべりが達者で、面白くて、昔から大好きだった。
長く一人暮らしをしていたが、数年前から介護付きの老人ホームに入居している。
そんな祖母の口癖が、「困ったことがあったら、なんでもばあちゃんに言えよ。銭だけはあるでな」。
聞くたびに、いつもの“ばあちゃんジョーク”だと笑っていたけれど、祖母はずっと、頼ってほしかったのかもしれないなと、そのとき初めて思った。
年齢を重ね、からだが衰えれば、どうしたって自分でできることは減っていく。
でもだからこそ、家族から遠慮せずに頼られたり、甘えられたりすることがたぶん、今の祖母にとっての生きがいになっていたのだと。
そんな思いを携えながら、先日パートナーを連れて祖母に結婚の挨拶をしにいった。
祖母は本当にうれしそうに笑って、何度も何度もパートナーと握手したあと、またいつもの言葉を言った。
だから。
「ばあちゃんにいっぱい助けてもらってるよ。また困ったときは頼るからね」
そう返せたことが、自分でも嬉しかった。
どんなに大好きでも、いつか別れが来ることはわかっている。
その時まで私は、孫として精一杯、祖母に甘えたいと思うのだ。
(おわり)
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