09.20 2024

  • boco to decoシリーズ

    #暮らしの拾いもの

    一見いらないもの、自分に関係のないように思えるものも、少し視点を変えればやさしく光り出す。そんな気付きをひっそりと拾っていく、日常エッセイ。

最近、仕事で“老い”について考える機会があった。

大切な人に変化が起きたとき、周りにいる私たちには何ができるのか。

専門家の方と編集部のメンバーで対話をしていくなかで、印象に残った話がある。

それは、相手が高齢で、もし介護が必要だったとしてもできること、やりたいことまで奪ってはいけないということ。

ただお世話されるばかりでは、本人の生きがいが失われてしまうのだと。
 



この話を聞いたとき、私は99歳の父方の祖母のことを思い出していた。

私とちょうど70歳離れた祖母は、おしゃべりが達者で、面白くて、昔から大好きだった。

長く一人暮らしをしていたが、数年前から介護付きの老人ホームに入居している。

そんな祖母の口癖が、「困ったことがあったら、なんでもばあちゃんに言えよ。銭だけはあるでな」。

聞くたびに、いつもの“ばあちゃんジョーク”だと笑っていたけれど、祖母はずっと、頼ってほしかったのかもしれないなと、そのとき初めて思った。

年齢を重ね、からだが衰えれば、どうしたって自分でできることは減っていく。

でもだからこそ、家族から遠慮せずに頼られたり、甘えられたりすることがたぶん、今の祖母にとっての生きがいになっていたのだと。
 



そんな思いを携えながら、先日パートナーを連れて祖母に結婚の挨拶をしにいった。

祖母は本当にうれしそうに笑って、何度も何度もパートナーと握手したあと、またいつもの言葉を言った。

だから。

「ばあちゃんにいっぱい助けてもらってるよ。また困ったときは頼るからね」

そう返せたことが、自分でも嬉しかった。

どんなに大好きでも、いつか別れが来ることはわかっている。

その時まで私は、孫として精一杯、祖母に甘えたいと思うのだ。

(おわり)

  • ライター・編集者

    むらやま あき

    1995年長野生まれ。おもにインタビュー記事やエッセイを書いています。1本80円のやきとんとレモンサワーがあれば、結構しあわせ。頑張らなくてもハッピーに生きる方法を模索中。

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