『唯一無二のお守り』 エッセイ - 暮らしの拾いもの Vol.15
01.11 2024
誕生日を祝ってもらうのは、とても嬉しいことだ。
「おめでとう」の言葉だけでも嬉しいのに、プレゼントまでもらえちゃうなんて、生きていてよかったなあと思う。
思いやりが詰まった贈り物はどれも宝物だけど、なかでもとりわけ忘れられない誕生日プレゼントがある。
私が26歳の誕生日を迎えたときのこと。
例年どおり、家族を代表して母から手紙が届いていた。
このところはたいてい「おいしいものを食べてね」とお金を入れてくれていたのだけど、その年は、リボンが掛けられた長方形の箱が入っていた。
何だろうと思って開けると、そこに入っていたのは、真っ赤な革財布と、小学校の入学式の朝に庭で撮った家族写真だった。
一瞬の間を置いてすぐにわかった。これは、私のランドセルだ。
つやつやの本革だけど、ところどころに小さな傷がたくさんついている。
まぎれもなく、じいちゃんに買ってもらって6年間をともにしたランドセルだった。
本来ランドセルは小学校卒業と同時に役目を終えるものだ。
かさばって場所もとるし、ずっと保管しておくわけにもいかないだろう。
使っていた私ですら、とっくにその存在を忘れていたし、処分したとばかり思っていた。
それがこんな形で私の手元に戻ってくるなんて、思いもしなかった。
同封されていた母からの手紙にはこんなことが書かれていた。
「プレゼントはあきと苦労を共にしてきたランドセルです。よくここまで大人になりました」
悩みながらも前に進んできたこと、今ちゃんと自分の足で立って生きていること。
それを実感したとき、生まれてよかったと心から思った。
生まれ変わったランドセルは、たくさんの思い出をのせたまま、これからを生きる私の唯一無二のお守りになった。
じつは、お財布として使うのはもったいなくて大事にしまってある。
でもたまに落ち込んだときに取り出しては、ひとしきり泣いて、また頑張ろうと力をもらうのだ。
(おわり)
#暮らしの拾いものvol.14
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