佐賀県佐賀市久保泉町で育てられている「はがくれすっぽん」。
銀座の老舗料理店や、素材に妥協を許さない一流シェフたちから、「これこそが理想のすっぽん」と確信をもって選ばれ続けている食材のひとつです。
かつて、すっぽんは「精をつけるための滋養食」や「薬味や酒で特有の風味を整えていただくもの」という印象が強い食材でした。
しかし、はがくれすっぽんはその常識を覆す、驚くほどクリアで癖のない味わいを誇ります。
今回私たちは、その美味しさの裏側に迫るべく、生産の最前線に立ち続ける株式会社あさうの朝鵜(あさう)会長にインタビューを実施しました。
義父より技術を受け継ぎ、約47年にわたりすっぽんの養殖に真摯に向き合ってきた会長が、失敗や挫折を乗り越えて高め続けた、揺るぎない情熱とこだわりを紐解きます。
1.常識を覆す「癖のないすっぽん」
会長、初めてこちらのスープをいただいたとき、その透明感に驚きました!
シンプルな調理でも、これほど雑味が少ないのは、なぜなのでしょうか?
私たちが目指すのは、すっぽん本来の澄んだ旨みです。
過度な味付けに頼らなくても、すっと体に染み渡るような純度の高さを追求しています。
従来のすっぽん料理では、特有の風味を整え、旨みを引き出すために、生姜や酒をたっぷり使ってじっくり炊き上げるのが一般的でした。
しかし「はがくれすっぽん」は、素材そのものの雑味が少ないため、生姜や酒は本来の旨みを引き立てる最小限の量で十分。
驚くほど透き通った「味の純度」を感じられます。
それこそが、和食の名店のみならず、フレンチやイタリアンのシェフをも魅了している理由なのです。
この「味の純度」を徹底的に守るため、あさうでは長年の試行錯誤でこだわり抜いた「エサ」や「水、土壌」といった環境づくりに、妥協することなく取り組んでいます。
さらに、季節により状態は異なりますが、市場へはできるだけ状態の良い、選りすぐりの個体だけを卸すという徹底した品質管理を行っています。
この一貫した信念と手間こそが、自らが育て上げた命に対する絶対的な自信と、ブランド「はがくれすっぽん」への誇りの表れなのです。
2.極上の味と安心安全を育む「4つの秘密」
はがくれすっぽんの美味しさと安心を支える、具体的なこだわりのポイントを教えてください。
大きく分けて4つのこだわりがあります。
どれかひとつでも欠けると、この味にはならないんですよ。
【こだわり1】
水温17.5度の安定した水質。山が育む「天然地下水」を掛け流しで使用
はがくれすっぽんの養殖場は、佐賀県佐賀市の背振(せふり)山のふもとにあります。
かつて田んぼだったこの地を選んだのは、自然が育んだ清らかな天然地下水が豊富だったからです。
この地下水は、年間を通じて約17.5度と水温が一定。
冬は暖かく、夏は冷たく感じられます。
この地下水を「差し水」として使用することで、新鮮で健康的な水質を維持しています。
【こだわり2】
理想の環境を人の手で再現する、徹底した「土壌管理」
はがくれすっぽんの最大の特長である「癖のなさ」は、気が遠くなるほど手間をかけた「土づくり」に支えられています。
すっぽんは1日の大半を泥の中で過ごすため、土の状態がそのまま身質や香りに直結するからです。
朝鵜会長が理想とするのは、広大な敷地に余りあるほどの池を用意し、1年ごとに池を休ませて土を自然に還す方法。
しかし、限られた環境の中でその理想を叶えるのは簡単ではありません。
そこで会長が辿り着いたのが、「土の入れ替え」と「天日干し」による徹底した管理です。
あさうでは、ビニールハウス内にあるすっぽんのいけすの土を、定期的に総入れ替えしています。
「泥も使い続けると痩せて、質が悪くなってしまいます。本当は自然に休ませるのが一番ですが、それが難しい現状では、新しい土を入れることが今の私たちにできる最善の策なんです」
2~3マスずつあえて使わない期間を設け、池の水を抜いて太陽の光に当てる「天日干し」を行っています。
一度すっぽんを育てた土には排泄物などの窒素分が残りますが、あえて草を生やすことで土壌を浄化させていきます。
自然の力を借りて、土のコンディションをなるべく「ゼロ」の状態へ戻していくのです。
「冬場の凍えるような寒さの中、泥まみれになって土を入れ替えるのは本当に過酷な仕事です。でも、すっぽんが健やかに育つ姿を思えば、私たちにとっては欠かせない作業なんです」
この途方もない手間ひまこそが、臭みの少ないクリアな味わいの土台となっているのです。
【こだわり3】
自家製野菜をその場で調理。酸化を防ぐ「作り置きなし」のエサを使用
エサの時間は1日2回、朝と夕方に行います。
魚粉をベースに、「人間が口にしても良いもの」を条件に自家製の大根やカボチャなど、季節の野菜をその場で練り合わせます。
特に、丹精込めて育てたカボチャをミキサーでジュース状にして混ぜる工夫は、すっぽんの色つやを良くし、品質を高めるために欠かせません。
酸化を防ぐため、常に「作り置きなし」の新鮮な状態で与え、水温や食いつきに合わせて細かく量を調整する。
そんな日々の積み重ねが、より良い身質を作り上げています。
【こだわり4】
15年以上、抗生物質ゼロ。愛情が生む「自然な健康状態」を維持
はがくれすっぽんの養殖場では、15年以上にわたり抗生物質や薬剤は一切使用していません。
過去の失敗から病気の原因を突き止め、現在は自然の力を活かした環境づくりによって、すっぽんの健康な状態を維持しています。
また、すっぽんは振動に非常に敏感なため、近隣の工事には細心の注意を払い、水替えもストレスを与えないように行うなど、デリケートな管理を徹底しています。
3.全身が美食の「究極の食材」
はがくれすっぽんの身はもちろんですが、あの濃厚なレバーや黄金色の脂には、食べるたびに感動してしまいます。
捨てるところがないのが、すっぽんの本当の良さ。
すべての部位に旨味が詰まっているんです。
なぜ、これほどまでに料理人を魅了するのか。
その理由は、捨てるところがどこにもない扱いやすい食材だからです。
中でも驚くべきは、牛や馬に引けを取らないと評される、濃厚でクリーミーな「レバー」。
そして、「黄身」と呼ばれる黄金の脂。
馬刺しのたてがみにも似たコリッとした心地良い歯ごたえで、口に含めば、とろけるような甘みを楽しめます。
コラーゲンの塊であるエンペラは煮こごりにするとフグを思わせる弾力が生まれ、赤身は鶏ささみのような食感をもちます。
甲羅や肉から取れる深い出汁まで、すべてが使える「究極の食材」なのです。
4.「はがくれすっぽん」がブランドになるまで
今では最高級と称される「はがくれすっぽん」ですが、現在の品質にたどり着くまでには、どのような歩みがあったのでしょうか。
最初から順調だったわけではありません。
何度も失敗し、時には厳しいご意見をいただきながら、一つずつ理想を形にしてきたんです。
「はがくれすっぽん」の歴史は、今から約47年前、朝鵜会長が義父からすっぽんの養殖技術を受け継いだところから始まりました。
当時はまだ手探りの状態で、加温ハウスの中のすっぽんが一晩で全滅してしまうという苦い経験もしました。
その悔しさをバネに、文字通り泥にまみれて試行錯誤を繰り返し、土壌の改良からエサの配合まで、理想の味を追求するために、あらゆる環境を見直しました。
こうして辿り着いた「雑味の少ない澄んだ味わい」こそが、現在の「はがくれ」ブランドの原点となっています。
時には「臭みはないが、あっさりし過ぎている」「誰が調理しても美味しく作れる」と言われることもあります。
しかし、あさうでは、すっぽんの個性を強く出すことよりも、ご家庭の食卓への馴染みやすさを何よりも大切にしています。
特別な日の贅沢としてだけでなく、日常の料理として扱いやすく、誰が食べても心から美味しいと感じられる味。
そんな、人々の暮らしに優しく寄り添うすっぽんをお届けすることこそが、あさうの理想なのです。
大量生産に走らず、価格競争もしない。
自分たちが育て上げた「命」に最後まで責任を持ち、心から納得できるものだけを世に送り出す。
このひたむきな誇りこそが、大阪市場での圧倒的なシェア、そして銀座の名店が厚い信頼を寄せる理由なのです。
5.女性の美と健康に寄り添う、食べる美容液
すっぽんというと男性のイメージが強かったですが、会長のお話を伺うと、実は女性にこそ食べてほしい優しさがあるのだと感じます。
そうなんです。
古くから美と健康の源とされてきた知恵が、この一匹には凝縮されていますからね。
かつては「男性の精力剤」として語られることが多かったすっぽんですが、その本質はむしろ、繊細な女性を内側からサポートするところにあります。
中国では3000年も前から、すっぽんは「美と健康の源」として重宝されてきました。
東洋医学には「血の道(巡り)」を整えるという考え方がありますが、すっぽんはまさにその助けとなる食材。
現代の女性が抱える冷えやゆらぎ、年齢とともに訪れる特有の悩みなどにも、優しく寄り添ってくれる「古来の知恵」が詰まっているんです。
栄養面を見ても、私たちの肌や髪の土台となる20種類のアミノ酸や、美容に嬉しいコラーゲンがたっぷり。
さらに、「はがくれすっぽん」ならではのあの黄金色の脂には、必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸などの成分がぎゅっと凝縮されています。
臭みのない、透き通った味わいのスープを飲むたびに、体中へ染み渡っていく潤い。
その上品な味わいから「食べる美容液」と呼ばれることもあるほどです。
まとめ:はがくれすっぽんが届ける、心と体に寄り添う「優しさ」
佐賀の山あいで育まれる「はがくれすっぽん」には、高級食材という枠組みを越えた、命と向き合う深い物語が詰まっていました。
自然のサイクルを大切にしたいという想いから、地道な泥の入れ替えや天日干しを欠かさない、妥協のない環境づくり。
全滅の危機や厳しい評価を乗り越えて、ようやく辿り着いた雑味のない澄んだ味わい。
そして、プロの料理人だけでなく、ご家庭の食卓にまで届けたいという作り手の想い。
そのすべては、すっぽんを口にする人の健やかさを願い、素材の力を最大限に引き出そうとする真っ直ぐな想いから生まれています。
驚くほど雑味がなく、体中にすっと染み渡っていく澄み切った味わい。
その裏側にある「目に見えない優しさ」は、忙しい毎日を過ごす現代の女性にこそ、そっと取り入れてほしい「天然の滋養」です。
今日はお話を伺って、あの澄み切った美味しさは、会長たちが積み重ねてきた「目に見えない手間」の結晶なのだと改めて実感しました。
そう言っていただけると、一つひとつの手間に込めた想いが報われる気がします。
これからも、嘘のないものを届けていきたいですね。
- 話者:
- 朝鵜一男(株式会社あさう会長)、桧垣 まいこ(生活総合サービス)
- 監修:
- 株式会社あさう


